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亀野さんがゆっくり名刺をしまったのを見届けてから、注文を聞く。
とりあえず、ビールを、というので、冷やしたグラスと瓶ビールを出し、付きだしのしめじと青菜の煮浸しを出す。
亀野さんは、丁寧におしぼりで手を拭いてから、ビールを一口飲み、グラスから箸に持ち換えて、青菜をつまんで口に入れる。
そこまでの動作で数分は経っているんじゃなかろうか。
あまりの動作速度に、逆に目が放せず見つめてしまった。
それは、ミハイさんも木戸もそうだったらしく、亀野さんがもぐもぐとこれまた一口30回咀嚼ぐらいに口を動かしている間、黙って様子を見ていた。
「・・・はーあー・・・ビールもー、菜っぱもー、いーい味ですなー。」
ようやく一口目を飲み込んでの感想。
それを聞いて、思わず木戸は床をだんだん!と踏みしめ、ミハイさんのグラスを持つ指先にわずかに力がこもったように見えた。
二人の心の声は、おそらく一致している。
じれったいーーーこの一言に尽きるんじゃないだろうか。
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