二夜

26/35
前へ
/1240ページ
次へ
すっかり毒気を抜かれたミハイさんが、自分の席に座り直し。 俺は、木戸の前に焼き鳥20本と牛肉のたたきを出した。 その間に、木戸の訴えを聞いた亀野さんが、うんうんと頷きながら、慰める。 「まーあ、長ーく生きーてーるとー、そーゆーことーもーありーますーねえー。でーもー、兄さんのー持ち味はーなくしーちゃーいけまーせーんよー。」 「俺の持ち味・・・?」 「ゆーっくりーでもー、丁寧ーにーお仕事ーするー、そーれはー大事なーこーとーでーす。」 あまりに時間がかかるので、俺の言葉でまとめさせてもらうと、ようするに。 話を聞くところによると、力仕事ばかりが得意で細かい作業が同僚より遅いらしいが、雑なばかりの力自慢よりよほどいい、と。 木戸の誠実さや真面目な面は、きっと棟梁が見ていてくれるし、丁寧に仕事をこなしていくうちに技術も向上していくだろうから、今は我慢の時だと。 これを20分以上かけて諭されている間中、木戸は床にへたりこんだまま、おとなしく亀野さんの話を聞いていた。
/1240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23492人が本棚に入れています
本棚に追加