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「……おるこちゃん」
「え? 秋ちゃん? 『おるこちゃん』って?」
――いや、あの……『おるこちゃん』じゃなくってさ、ボクは「薫子ちゃん」と言っているんだけど……
何がどうしてしまったのか、河鹿薫子には『おるこちゃん』としか聞こえないらしい。
「あたし、秋ちゃんのソレ嬉しいかも。秋ちゃんがあたしを『おるこちゃん』って呼ぶの、とっても嬉しいみたいな」
――あれ? 何だかさ、「おるこちゃん」って呼ばれるのを気に入っちゃったみたいな? んじゃ、もう、「おるこちゃん」でイイや……
「おるこちゃん? 何で急に泣いちゃったの?」
「いやん、うふふ……秋ちゃんったら秋ちゃん……」
「あの? え? おるこちゃん?」
――河鹿薫子は、ボクの話を聞いていないのか、何なのか……
なぜだか解らないが、彼女はボクの名前を連呼しつつ、照れくさそうに真っ赤な顔をしながらボクを見つめてくれている。
「うふふ、あはは……秋ちゃん、秋ちゃん、秋ちゃん……」
「いや、だから、あの、えっと……おるこちゃん?」
「うふふ……やっぱり、秋ちゃんの『おるこちゃん』って気持ちイイわ」
「え? 気持ちイイって、意味ワカンナイんだけど……」
「秋ちゃんが、まさか……あたしを名前で呼んでくれるなんて、嬉しいし、気持ちイイし」
「えっと? ボク、何だかさ、ちっとも解せないんだけど……」
「あたしに対する秋ちゃんだけの特別な呼び名みたいで、うふふ……だから、『おるこちゃん』って、何だか、あたし、嬉しいもん」
「えっと? 良く解んないけど……でもさ、良く分かった気はするよ」
「秋ちゃん……うふふ、秋ちゃん、秋ちゃん、秋ちゃん……」
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