微睡みの終わりに

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 海が怒っている。 空が泣いている。 獣は巣に隠れ、月は黒雲に身を包む。 そんな嵐の晩。  すっかり古びて、最早断崖と同化しつつある石造りの塔の最上階、そこだけはまだ部屋と呼べる状態を保っていた。 とは言っても、家具は天蓋付きのベッドだけ。 階下では壁を穿っただけの窓に、この部屋だけは鎧戸が備えられ鉄格子が嵌め込まれており、階段へ繋がるはずの唯一の出入り口は壁に塗り込められて存在しない。 すなわち、そこは牢屋、否密室だった。  ベッドはもう何年も整えられていないはずなのに、綺麗だった。 そこに眠る少女も、綺麗だった。
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