story 5

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こないだ? ありがとうなんて言われること いたしたっけ? 高木さんと会うのは今日が2回目だったりする。 しかも前回は朝陽局が一緒で 2人でやりとりする場面はなかったはずだ。 「…すみません、何か、ありましたでしょうか?」 分からないものには頷けない。 わたしのすぐ前にいた高木さんは振り返ると にっ、と笑って白い歯を見せた。 なんとなく眩しいそれに顔を背けると 意外や意外。 「僕じゃなくて、うちの母」 「は?」 は? 箱に乗り込んだ高木さんは人差し指を床に向けて 「ここに閉じ込められたんだって。 こないだ。 相良さんと一緒で助かったって」 は? 母? 閉まる扉がそこを閉ざすまで数センチになった時 「また、連絡します」 ヒラヒラと振られた手が一瞬だけ見えた。 高木さんと、閉じ込められたあのオバサン高木さんは 「おや、こ?」 親子!!? アレとアレが?? わたしの人差し指が目の前のエレベーターと その隣のエレベーターを往復する。 似ても似つかない2人が、親子か。 似ても似つかない兄弟が、他人。 似ている素材を持つ姉弟が…… ピンと、立っていた人差し指がふにゃりと力を無くす。 あれからもう10日。 夏成くんからなんの音沙汰もなくて 居候させてもらってる高峰さんとは お互いの仕事の都合で、すれ違いばかりだった。
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