story 5

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ちょっとした繋がりに驚きながら戻ってきたフロアは、みんながそれぞれの持ち仕事をこなす姿。 この景色に慣れてしまった。 まだ受付にいた頃はここを見て なんか、別世界 だと思っていたのに 今じゃ自分もこの中のコマの1つになっている。 「あ、帰ってきた、相良さん!」 いっつもわたしを見つけては ギャンギャン吠える朝日局。 前は文句ばっかり言ってくれてたのに 最近じゃ、どうしたのか 「こっちの三島さんのデータ、上手く纏めてるじゃない もうひとつの方も今日中にやっといて!」 褒めて 無茶振り。 前は褒められるなんてなかったのに 無茶振りばっかりだったのに。 「へーい」 気の抜けた返事をすると 「返事は、はいっ!」 キッと睨んできた朝日局の目尻の皺が伸びるかわりに眉間に深いそれが寄った。 あれから10日経っても わたしはクビにならない。 あのお多福肉団子にも何もされない。 わたしも、何もしていない。 高峰さんからは“GOサイン”が出たけど ちょっと二の足を踏む状態だ。 夏成くんに、仕事は辞めません、と宣言したんだから、早くヤッちゃわないといけないのに どうしても踏み出せずにいた。 「……アレと、ヤルの、ヤダ」 片言のように呟き、朝日局の無茶振りファイルを手に取る。 思いのほかズッシリと思いそれに ああ、残業決定、と肩を落とした。
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