story 5

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腹を括るつもり、じゃダメじゃん。 笑うー。 明るく考えようとしたら、副社長が物憂げに尋ねてきた。 「相良、お前今男いる?」 「へ?」 副社長といると“は行のセリフ”が比較的多めなのは 気のせいだろうか。 「そんな、プライベートなこと 答える義務あるんですか??」 いえ、無いですよね。 もう、お願いだからわたしのことは 放っておけ!! バシッと人差し指をかっこよく出口に向けて示してやりたい。 「社長、結構しつこいタイプだからな、ああ見えて」 いやいやじゅうぶんにネチネチしてんだろよ。 じゃないと、こんなにスカート ギッタンギッタンにしないよねー? ふつう。 再度、袋の中のみじん切られた哀れな布たちを見て 肩を竦ませた。 あの 爬虫類のような肉に埋もれたうっすい目を 更に薄くして 呪いの念をこめながら切り刻んだに決まってる。 金をチラつかせて 女の穴を支配しようとするやつだ。 そうに決まってる。 だ、けどもだ。 「しつこいからって、なんでそんなセクハラに答えなきゃならないんですか」 分厚いファイルもやっと底が見えてきた。 ページをひとつ捲りながら黒目を上に向けて考える。 しつこいのを逆に利用するっていう手もあるな。 ふんふん。 ヤらなきゃヤられるんだったら こっちからイカなきゃ、だ。 レンズが思わず下がってきて ささっ、と俯いた。 やべやべ。 気をつけなきゃ。 そう思った矢先のこと。
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