story 5

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眉目秀麗。 久しぶりにこの四字熟語が使える日がきたわ。 四字熟語って、なんかめちゃ頭いい印象がある。 イイ男といえば 夏成くんも盛大にイイんだけど 神谷忍とはまた別というかなんというか。 高峰さんは美しいの部類だし。 ……男にしとくのもったいナシ的な。 「副社長様、邪魔ですよ そんなとこにいたらじゃま!」 ピッピっと、左手だけで振り払い 姿勢を正してまたパソコン作業。 ファイルを反対側に置き直して、神谷忍から少し距離を作った。 「ふーん」 鼻であしらう様に言った後 机の上から掌が撤退する。 「気が散りますからどっか行ってください」 離れた分だけ…… 神谷忍側に面している身体が この男の気配をとても気にしていて 少しの動きにも警戒警報発令中。 「いつもそんなに集中なんてしてないだろう」 頭の上から降ってきたセリフに 失礼な男だ、と思って顔だけを向けると 不意に伸びてきた手が、指が、コメカミあたりから髪を梳くように入り込んできた。 指の腹が、頭皮を遡っていくゆっくりとした動きに 全身の毛穴が膨らみそうになる。 こういう瞬間って どうして人は波立つんだろう。 自分とは別の人間に 特に親しい間柄ではない人間に、異性に 心臓が揺れるように動き出すのは、何故。 まだ、侵入を続ける大きな掌が頭の後ろまで進み上手くクリップを掴んだその瞬間に 髪がバラバラとひと筋、ふた筋、重力に引かれていく。 軽くバウンドする毛先が まだ微かなカーブを描いていた。
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