story 5

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いい加減に高峰さん家からもどうにかしなきゃ。 今日は早めの帰宅を心掛けて 仮住まい?居候先に辿り着く。 しっかしいいエレベーターだなぁ。 天井と床の四隅をそれぞれ見て 静かな作動に思わず微笑む。 M社製のエレベーターは国内シェアトップ。 KAMYTECのエレベーターもM社製だ。 見えないハイテクがそこらじゅうに散らばっていて “エレベーターとそこに乗るわたし”を今も守っている。 あ、しつこいようだけど 以前、エレベーター関連の会社にいたことがある。 毎日疲れる。 こぉんなに頭ばっかり使う仕事はしたことがないからだ。 いったいいつまで続けるつもりか。 あ、社長とどうこうなっちゃえばいいのか。 でも、社長とどんな仲になれば良いのか? それが不明だった。 「あ」 エントリーと指紋認証で開いたドアの向こうに 灯りが見えた。 わたしがここに来てから高峰さんは 帰ってきてない、んだと思えるくらいに姿を見せずにいた。 玄関に揃った、革靴。 靴を脱いでから揃える習慣はとりあえず続けている。 今日もそうして少しだけ跳ねる心臓を感じながら廊下を進んだ。
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