story 5

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丁寧に手を洗った。 オーガニックのハンドソープなんだそうだ。 スリムな真青のボトルはお洒落で わざわざ詰め替えたりしなくても 尚且つこぉんな綺麗なパウダールームなら SNS映えも問題ない。 「お腹空いたー」 既に10時を過ぎていたけど 素敵なワインまで登場してきちゃったから、もう始末に負えない。 ワインオープナーを器用に操り コルクに螺旋を入り込ませて、瓶の口を固定すると テコの原理で、きゅぃ、っと栓が抜かれる。 私はお酒には断じて弱いけど 激しく大好きだ。 本当なら酔っ払いたいし 出来ることなら…… と、考えて止めた。 だからなんなんだって、なるから止めた。 「ワイン飲みたーい!」 「酔っ払うぞ」 高峰さんの意地悪そうな笑みがまた炸裂した。 でも、いいよね? 酔っ払ってもいいから、ソレ出してくれるんでしょ? だって高峰さん、 わたしがへべれけになるの、知ってるもんね? ここに居て これがあって この時間で 全部含めて面倒見てくれるからでしょ? 小ぶりなボウルの曲線が艶めかしいワイングラスに 淡くて緑かがった液体が注がれていく。 「美味しそう」 「美味いよ?間違いない」 高峰さんがそう言うから ますます期待が上がってくる。 いつの間にかちょっとした前菜がチラホラと並べられていて 物凄くハッピーになった。 何を食べても美味しくて 口当たり滑らかな癖のないワインはスルリと喉を駆け下りる。 高峰さんと並び ただいっ時の平和な時間を噛み締めた。
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