story 5

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「夏成のことだけどな?」 随分いきなりの話題の突っ込み方に マカロニがスポンとそのまま喉にはまったのを 慌てて咳で押し返す。 ゲホゲホと大きな音をたてていたら 「なにやってんだ」 ティッシュが差し出された。 高峰さんはほんと、激しく気が利く。 この人といると生活楽そー。 「ごべん」 鼻をかみながらひと息入れて姿勢をただすと それを見計らったように 「引越し、終わったとさ」 思ってもいなかったことを、サクリと続けた。 「え?」 わたし、何も聞いてないんですけど?? と、言いますかなぜ高峰さんが? 「美隼はどうするんだ」 え、そんな急に言われても…… 何を今更。 急にそんなことを言ったのは、わたしだ。 “好きにしたらいい” って言ったのはわたしだ。 だからって、そんな簡単にホイホイ出ていくんだ。 無性に立つ腹と比べ物にならないぐらいの ショック。 確かに わたしたちは、仲良しのキョウダイではなかったし 一緒に住んでいながらも ただ部屋を共有してたみたいなもんだ。 それでも出ていくんならそれで、ひとことくらいあってもいんじゃないの? 「あー、じゃ、明日部屋に戻るよ」 「そうか」 ぐーるぐる、とこないだの経過を頭の中で辿りながら 一気に味を無くしたグラタンを口にする。 取り皿に乗っけた分だけは 何がなんでも食べてしまおうと思った。
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