第5話、母子家庭で疑似新婚生活

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★  ところで、我が浅間家は慎ましやかな借家暮らしだったりする。  ――そう、『家作』なんて昭和時代の人々が呼んでいた借家みたいな……もう、築50年を余裕で超えた、昭和時代のオンボロ木造モルタル平屋家作みたいな……  そんなチープな造りの安普請炸裂な、いわゆる、荒ら屋も丸出しなオンボロ借家に住んでいたりする。 「そういえば、秋ちゃんってドラムが上手なのよね……うふふ」 「えぇー? おるこちゃん、そんなこと、何で知ってんの?」  ――あ、そうそう、借家と言っても長屋みたいな集合住宅じゃなくてさ、一軒家のカサクなんだけどさ……  解り易く換言をすれば、賃貸マンションやアパートではなく、一軒一軒が単体で建っている借家に暮らすボクの浅間家だったりする。 「だって、あたし、秋ちゃんが駅前のレンタルスタジオでドラムの練習してるとこ見ちゃったし」 「うそ……レンタルスタジオでボクがコソコソ、練習で叩いてるとこ見ちゃったの?」 「うん、あたしもコソコソ見ちゃったわよ」  ――厳密に言い直すとね、我が浅間家は二軒家を借りて住んでいるんだけど…… 「秋ちゃんったら、凄く上手だったもん。プロ顔負けって感じだったもん」 「おるこちゃん、それは褒め過ぎだよ。だってさ、ボクは単純なビート系のリズムしか叩けないし」  ――うち一軒はボクたち家族が住まう借家で、それと薄っぺらい壁一枚で連なる、もう一軒はボクの作品を製作する作業場に使ってるみたいな…… 「ねぇ、ねぇ、秋ちゃん?」 「え? おるこちゃん、なぁーに?」 「秋ちゃんって、いつ頃からドラムを始めたの?」 「えっと……だいたい一年位前から……だったかな?」 「わお! たったの一年しかやってないのに? なのに、秋ちゃんが叩いてたドラム、とっても上手だわよ」 「うーん……そうなのかな? ボクにはワカンナイや」  ちなみに、借家の二軒家にあるボクの作業場というのは、いわゆる、ボクのアトリエだったりする。 ★
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