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『お疲れ様です。第二十八駆除隊は二十分の休息の後、第十三駆除隊と合流。部隊を再編して、駆除に当たってください』
通信士の淡々とした声に苛立ちを覚えながら、肩で息をして崩れるように床に寝転がった仲間を見やる。隊員は出動前の三分の二に数を減らしていた。
「たまんねえな。真夏日ってのは。あの羽音思い出すだけで体が竦んじまう」
「つーか、あんな勢いで飛んでくる奴どうやって避けるんだよ」
「数もそうだが、体が。いつもの倍以上に疲れる」
「しかも、陽が傾いて気温が下がるまでだろ」
「熱帯夜なんてあったら、死ぬしかないな」
「縁起でもねえこと言うなよ。熱帯夜なんて何十年も来てないだろ」
「もう全部、外に出しちゃえばいいじゃんよ」
口々に愚痴をこぼしながらも、隊員たちが息を整え、回復に努める。
俺たちはここで降りる訳にはいかない。生きる場所がここ以外には無いからだ。辞めればいいと言う奴も外には居る。だがそいつは俺たちのことを何もわかってない。辞めてどうなるというのか。先細る生を送って死因が餓死になるだけだ。辞めて好転する訳じゃない。ここで生きていくしかない。
「どうかした? 難しい顔して」
黙って考え事をしていた俺にタクマが怪訝そうに聞いて来る。
「いや。今朝、子供が虫相撲してるの見てな。俺らの立場もあの虫と大して変わんねえと思って」
「虫とぶつかるようにせっつかれてるしね。死骸を作ってあいつら集めないと退避も許されないなんて」
「外まで逃がさないためだろ。結構な数が引き返してくるって話だからな。にしても、何で死骸に寄って来るんだろうな? あのオレンジの液体に群がってるって話だが」
「自重支えてるのも体液だって話だよね。何なんだろうね」
「説明が無いってことは兵隊が知る必要は無いってことなんだろうな。胸糞悪い」
つまらない話をしたと思い、口を紡ぐとタクマも同様に思ったのか、休憩の残り時間を静かに過ごした。
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