ずっと君のことが好きだった

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「もう、大丈夫。実は今さっき、夢の中で桜木に告白したんだ。だから約束通り、君に全てを話すよ。僕と桜木典子の物語を・・・」 圭一は過去の思い出、英夫と想い出の旅をした事、桜木典子と自分の事、夢での出来事、全てをさらけ出すかのように由佳に語って聞かせた。 それは辛い過去としてではなく、幸福に満ちた思い出として。 2年後・・・ 由佳は可愛らしい女の子を出産した。 病室では圭一と麻紗美が生まれたて間もない赤子を、まるで観察するかのようにジッと見つめていた。 そんな2人の横で、由佳が名前について話し始めた。 「圭君、麻紗美。この子の名前だけど、私が決めて良い?」 「えっ?」 驚く圭一。 「前に3人で話し合って、名波って決めたじゃないか。それではダメなのかい?」 そう尋ねると、由佳は頷く。 「うん。この子の顔を見たら、何かしっくりこなくて・・・」 「じゃあ、ママ。どんな名前にするの?」 今度は麻紗美が尋ねた。 「典子、芹川典子って名前を付けてあげたいの」 由佳は満面の笑みで答えた。圭一の方は顔を曇らせる。 「君は本当にそれで良いのかい?同情して名付けるのであれば、止めた・・・」 彼が話している最中に、麻紗美が小さな妹に呼び掛けた。 「のーりちゃん」 小さな妹は、無意識に手を動かした。 「典ちゃんは気に入ってるみたいだから、私は良いと思うよ。ねえ、典ちゃん!」 麻紗美はすでにその気になっているが、圭一はまだ納得がいかない。 「でも・・・」 由佳は迷いを見せる圭一と2人だけで話したくて、麻紗美に嘘をつく。 「麻紗美、ゴメンだけど喉が渇いたから、下の売店で水を買ってきてくれない?あと、余ったお金で好きな本を買っていいから」 「良いの?」 「良いよ」 「ヤッター!行ってきまーす」 麻紗美はお金を受け取ると、喜んで病室を出ていった。そのあと、由佳が話し始める。 「圭君。夢の中での桜木さんが言った事、忘れちゃった?」 「えっ?」 「ほら、生まれ変わる準備をするって言ってたでしょ?すぐに会えるって、ずっと傍にいるって言ってたんでしょ?永遠に一緒なんでしょ?現実味のない話かもしれないけど、それって今なんじゃない?」 由佳の言動によって、桜木典子が最後に言い残した内容の全てが、この世界に繋がっていたかのような錯覚を起こす。
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