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もうダメだ。
私は自分の不運を嘆いた。
眼前には陸軍。
そして頭上には空軍が旋回している。
奴らを倒さなければ、今夜の私に安眠は訪れない。
しかし、一体どういうことだ。
首尾は上々の筈なのに!
作戦は失敗したというのか!?
冷蔵庫と壁の隙間には、先日の死闘の後に購入した、赤い屋根のお馴染みの罠がチラリと見える。
こうなったら、空軍は後回しだ。
私は頭上を旋回する黒と白のバイカラーの連中を尻目に、テーブルの上にあった今朝の新聞を丸める。
夕刊では太刀打ち出来ない。
そこに朝刊があったのは、むしろラッキーと言うべきだろう。
簡易だが機能的な武器を手に、私は奴と間合いをつめる。
黒光りするボディが私の恐怖心を掻き立て、長い触覚が目障りに動く。
しかし私は怯まなかった。
全ては今夜の安眠のため!
私は一瞬の隙をついて丸めた新聞紙を降り下ろす。
スパーンッ!!!
やった。
小気味良い音の手応えに、私は勝利を確信する。
次は空軍だ。
とりあえず床に叩き付けた新聞紙はそのままに、私は渦巻き状の線香に火を放った。
細い煙が、耳障りな音を立てて飛ぶバイカラーの空軍を取り巻いていく。
しばらくすれば、奴らの息の根は止まるだろう。
これで心置きなく眠りにつける。
しかし私は見てしまった。
夢見心地でベッドに座った私の足元を、先程仕留めたはずの陸軍大将が走り去るのを。
私は部屋に充満する蚊取り線香の煙にむせながら、すがるような思いでベッドの下に置いたゴキブリホイホイに視線を投げた。
あぁ、夏なんてなくなればいいのに。
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