-其の零 十六夜月の出逢い―

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 けれど、あんな桃源郷の如く美しい場所に、見覚えなど土方にはなかった。  まぁ、蒼の方はわからないけれど。もし、知っている場所だったとしてものだろうから、聞いたところで意味はない。  土方は気を取り直して、蒼の手を引いて歩き出した。蒼の白く華奢な手は冷たく、土方の武骨な大きい手は温かかった。 -これが、蒼と土方。十六夜の黒猫と浅葱色  の狼の『運命の出逢い』だった-  そして、時の彼方に忘れ去られたはずの『物語り』が甦り、再び紐解かれた………………… -それは、狂おしく切ない程の『愛しさ』と  重くて深い『悲哀』に彩られた『お伽噺』-
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