-其の零 十六夜月の出逢い―

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 思いもかけず、散歩の道中に蒼を拾った土方は、屯所への帰路に着いていた。蒼は〝ずぶ濡れ〟の姿だったし、このままでは風邪を引きかねない。  それに、いつまでもこの〝異国情緒溢れる服装〟でいさせるのもどうか、と思ったのだ。  ちらりと手を引かれるまま、黙って着いてくる蒼に視線を向けると、蒼も土方を見ていたようで『ぱちっ』と目が合った。  憂いを帯びてはいるものの、あまりにも澄んだ瞳に『どきり』とした。そう見つめられると、心の奥底まで見透かされそうで、どうにも落ち着かない。 「あ、の………貴…方様、の……御名(みな)は…何、と………仰、るの…です、か?」  問われて、土方はそう言えば名乗ってなかったことを思い出した。自己紹介などは苦手だが、蒼には名前を聞いておいて、名乗らぬのも礼を欠くだろう。 「………『土方 歳三』だ。」 「………『土、方 歳三』様………。貴方、様に…お似、合いの………素敵、な御名…………で、ござ…います。」  素直にそう言って、蒼はように僅かに頬を染めながら笑みを浮かべた。その蒼の微笑みは、とても愛らしい。
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