-其の零 十六夜月の出逢い―

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「お前の『蒼』ってのも、お前に似合いの良い名じゃねえか。」  蒼はその名の通り、左目が『(あお)い』し、纏っている異国風の衣装も、(あお)と白を基調とした上品な色合いだった。  (あお)と白は蒼の清浄な雰囲気にも、よく合っている。まぁ、この衣装を見立てたのが蒼自身なのか、それともなのかはわからないけれど。 -それきり黙って俯いてしまった蒼を、土方は気付かれないように、観察していた。  身元不明ではあるが、間者とは考えにくい。蒼の瞳を見る限り『記憶がない』と言うのは本当なのだろう。  そもそも、衣装も顔(容姿)もこんなに、目立つ間者も有り得ない。しかも、この蒼にそんな芸当が出来るとも到底思えなかった。 (しかし、まぁ………本当に『綺麗』なんだよなぁ、コイツ。これでもうちょっと歳が上で女だったら良かったんだが………。)  土方はそんなことを思う。とは言え、土方はあまり性別や、年齢に拘る性質ではない。ただ〝抱く(だけ)〟なら『本物の女』の方がいいだけ。例え、男であっても〝抱く〟ことは出来る。まぁ、下世話な言い方になるが、躰がしなければ無理だろうけれど………。
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