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蒼を観察していた土方は『ちょこちょこ』と自分に着いてくる、蒼の頭を撫でてみた。他意はなく、ただ何となく〝手が動いた〟だけだったが。
すると、蒼は顔を上げると目を丸くしたかと思うと、次いで『きゅうっ』と嬉しそうに目を細めた。
-まるで『猫』のようだ-
何とはなしに、土方はそう思った。その妖眼も仕草も『猫』を連想させる。一目で土方の心を捕らえた、あの妖眼。
恐らく〝普通の生き方〟と言うのは、してこなかったのだろう。蒼の瞳は憂いに揺らぎ、その奥に悲哀が見え隠れしていた。
余程〝多くのものを見てきた〟のだろう。そうでなくば、十四、五歳(に見える)であんな瞳は持ち合わせぬだろう。
-『憂い』を帯び『悲哀』を孕む、奥深い瞳-
恐らく〝想像の及ばぬほどのもの〟を見てきたであろうに、その瞳は揺らいでいながら一点の曇りもない。
あの妖眼を忌み嫌われ『幽閉』でもされたのか、と土方は考えていた。蒼と出逢って間もないが、わかったことも幾つかある。
蒼は、どうやら相当に〝人慣れ〟していないようだ。まるで仔猫のようにおっかなびっくりしている。
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