-其の零 十六夜月の出逢い―

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 けれど、余程のことがあったと言うのは、蒼の瞳から窺い知れた。およそ、見た目から推し量れる年齢では、到底持ち得ぬ〝奥の深い瞳〟………いや、のだろうか?  けれど、蒼の瞳には一切の曇りもない。何かよからぬ〝(はかりごと)〟を考えているとも思えない、澄んだ瞳だ。  ただ、悲哀が見え隠れする、憂えるように揺れる瞳。妖眼であること以前に、惹き付けられる。  けれど。その揺れる瞳とは裏腹に、蒼は〝何かを考えている〟ようには見えない………何と言うか、言うなれば『まっさら』とでも言うのだろうか?そんな感じがして、どうにもこうにも調子が狂う。  よもや、蒼とて〝何も考えておらぬ〟わけではないが、そこまでの心の余裕がないのだ。『記憶がない』ことに加え、自分を連れ帰ろうとする、土方の真意もわからぬ。  土方に着いてゆくことを決めたのは、蒼自身だ。けれど、熟考を重ねた上で出した決断ではない。 -けれど。考えるより先に、蒼の『心』が衝  動的に『躰』を動かしたのだ-  考えるより先に、蒼は土方の手に、己が手を重ねてしまった。ほぼ『条件反射』に近い行動だったとも言える。
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