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だって、頭で考えるより先に心が傾き、躰を突き動かしたから。あそこで土方が手を差し伸べたことも、蒼が己が手を重ねたことも、何ら〝不自然なこと〟ではなかった。
記憶を失くし、寄る辺さえない蒼は手を差し伸べた土方に、そのまま縋るしかなかったのだろう。
-壬生浪士組 屯所-
蒼を伴った土方が屯所に帰り着いた時。出て行った時同様、皆が寝入っているようで、誰かに見咎められることもなかった。
それはいいのだが、問題は蒼だ。ずぶ濡れのままでは風邪を引きかねないし、このまま部屋に上げるわけにも行かない。手早く風呂を沸かし、蒼を浴室に連れていった。
「そんなずぶ濡れのままじゃ、風邪引いちまうだろ。よく温まってから出てこい。………一人で入れるよな?」
蒼は、まだ一言も発しないままだったので、心配になった土方は問い掛けた。『一人で入れない』とか言われたら、どうする気なのか?
しかし、蒼は黙ったままではあったが『こくん』と頷いたので、土方は内心、胸を撫で下ろした。懸念は、どうやら杞憂で終わったらしい。
蒼を風呂に入れてやることについては、やぶさかではない………ないけれど………。
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