-其の零 十六夜月の出逢い―

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 しかし。蒼の美貌は半端なく、もし一緒に入った時、間違いが起きぬとも限らない。  蒼一人を浴室へ促してから、土方は自室に戻り『ごそごそ』と行李(こうり)を漁った。蒼に着せる着物を見繕う為だったが、如何せん、蒼に合う大きさの着物はない。  蒼の着ていた異国風の装束は〝ずぶ濡れ〟で、そうそう乾くとは思えない。折角温まらせた蒼に、濡れた服を着せては意味がない。かと言って、裸のままでいさせるわけにもいかない。(※土方としても困るから。)  まぁ、ないものはどうにもならない。仕方なく土方の着物を手に、浴室前に戻り蒼が出てくるのを待った。 -暫くして、蒼が浴室から顔を覗かせた。『よく温まったか?』と問えば小さく頷く。やはり、あまり喋らない。  土方は持参した着物を渡した。再び浴室に引っ込んだ蒼だったが、また『ひょこっ』と顔を覗かせた。 「………どうした?」  目を瞬かせて土方が問う。浴室から出てきた蒼は、襦袢姿で困ったように着物を抱き締めている。  その仕草だけで土方は事情を察した。いや、蒼の来ていた服が〝普通〟ではなかったので、何となく予想していた。
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