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「ったく………。着付け方がわからねえんだったら、最初から言えよ。別に怒ったりしねえから。」
そう言いながら、蒼に着物を着付けてやる土方。蒼が小さく『申し、訳…御座いま……せん』と呟いた。
声が出せないわけでも、喋れないわけでもない。でも、あまり喋らないのだ。言葉が辿々しい所為もあるかも知れない。
やはりと言うか、案の定。土方の着物は蒼には大き過ぎたらしい。袖は膝丈まであり、かなりたくしあげたり、折り込んだりしたにも関わらず、裾は引き摺っている。
歩き出した途端、裾を踏んで転びそうになった蒼を、寸でのところで抱き止めた土方は〝面倒くさい〟と思ったのか、蒼を横抱きにして、部屋まで運ぶことにした。
羞恥からか・申し訳なさからか、蒼は土方の腕の中で真っ赤になっていた。それでも、土方の着物の衿を『ぎゅっ』と握り締めていた。
(やべえ、コイツ本当に可愛い///…………妙にそそるっつうか。コイツなら、男でもイケそうな………って、俺は何を考えてんだっ?!)
土方は慌てて、思考を振り払った。
-自室に辿り着いた土方は、蒼を降ろすと敷きっぱなしだった褥に、蒼と共に横になった。
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