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別に、他者への情がないわけでもない。ただ、そこまで土方の心を、捕らえられる者がおらぬだけ。
-宛てもなく気儘に京市中を散策していた土方だったが、ある橋の手前まで差し掛かった時に、ふと脚を止めた。
薄闇の中でわかりにくかったが、よく見ると橋の中央辺りの欄干部分に『小さな影』が蹲っている………ように見える。
-何時から、其処にいたのか-
遠目でもわかるほど、その影は〝ずぶ濡れ〟であった。と言うことは雨が止む以前、少なくとも〝ずぶ濡れ〟になるほどの時間、外にいたことになる。
それに、今は夜が更けた刻限だ。治安の悪い、このご時世に出歩いていたとなれば、余程の理由があってのことか。さもなくば、ただの馬鹿か・死にたがりか、のどちらかだ。
(………何だ、ありゃ。童?こんな刻限に………『妖し』か?)
土方は不審に思ったものの。何故か、そのまま放っておくわけには、いかないような気がした。ゆっくりと慎重に近付く。
土方に気付いてないわけがないのに、その『小さな影』は『ぴくり』ともしない。その微動だにしない様子から、生死は確認出来ない。
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