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なけなしの仏心か。それとも、ただの好奇心か。どちらともわからぬ衝動のままに、土方は、その踞る『小さな影』に向かって問い掛けた。
「おい、てめえ、生きてるか?こんな刻限に餓鬼が、こんな所で何してんだ?」
土方の言葉に、その『小さな影』が顔を上げた。その瞬間、さあぁぁっと風が吹き、朧に隠れていた月が顔を覗かせ、その影の姿をはっきりと照らし出した。
土方は、月光に照らし出された『小さな影』の姿に、思わず息を飲み込まずにいられなかった。
腰まで覆う、艶やかな漆黒の髪。雪のように白く透き通るような肌、朱い唇。異国情緒溢れる (中華風?)不思議な服。
そして。何より惹き付けられたのは、その瞳。右が黄金、左が蒼と言う左右色違いの妖眼であった。
-澄んでいるのに、憂えるように揺れる瞳-
その妖眼もさることながら、今まで見たこともないようなほどに、神秘的で清浄で美しいのだ。
-まるで『この世のものではないような』-
そんな錯覚さえ起こした土方は、『ハッ』と我に返る。影の主は、その妖眼で土方を『じっ』と見つめていた。
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