-其の零 十六夜月の出逢い―

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 寒さからか・恐怖からか。震える(おの)が躰を抱き締める少年。その〝痛み〟とやらを振り払うように、頭を振っている。  その少年の様子に、土方が『はた』と気付いた。恐らく〝記憶〟がない、失っているのだろう。だから思い出そうとすると、頭が痛むのだ。 「余程、辛い目にでも遭ったか。その〝左右色違いの目〟を忌み嫌われ、迫害でもされたのか?」     -こんなに『綺麗』なのに-  確かに。〝左右色違いの目〟を持つ者など、そうおるまい。よしんば、いたとしても、ここまで『クッキリ』と違うと言うのはあり得ない。  無論、猫であれば、あることだが。人間であるのならばではない。  それ以前に、何もかもじゃない。その妖眼は勿論のこと、服装も、どこか辿々しい言葉も、こんな刻限に〝屋外(そと)〟にいることも………   -何より『記憶が失われている』こと-  いつから『記憶がない』のかはわからないが、見た限りでは傷を負っているわけではないので、恐らくは〝精神的なもの〟なのであろう。 (………さて。どうしたもんかな、コイツ?)
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