-其の零 十六夜月の出逢い―

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 衝動に突き動かされ、声さえ掛けねば問題はなかっただろうが、今更言っても遅い。  声を掛けてしまったことで、この少年と土方の間には『(えにし)』が結ばれてしまった。まぁ、薄い縁であったのだが………。  とは言え。何となく、このまま放っておく気になれなかった。いくら子供と言えど、普段の土方ならば有り得ない考えだった。  女ならまだしも『綺麗』とは言え、男で・子供だ。土方は衆道でもないし、お稚児(ちご)趣味もない。 (※〝お稚児〟と言うには、十四、五歳では育ち過ぎているが。)  『陰間(かげま)』を相手にしたこともあるが、どうせ〝抱く〟なら、美しく魅惑的な肉体を持った女の方が良いに決まっている。  実際、土方の場合。島原に馴染みも多く、土方を〝恋しがって泣く娼妓(おんな)〟が、それこそ掃いて捨てるほどいるのだから。 (コイツ連れて帰って、一緒にいるところを見られたら、変に勘繰られそうなんだよな。)  この少年の『美貌』は普通ではなく、どう見たって美少女にしか見えない。土方はあまり性別に(こだわ)る男ではないのでを招きそうでもある。
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