-其の零 十六夜月の出逢い―

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 思案を巡らせながらも『ちらり』と少年を見遣れば、憂いに揺れる瞳で土方を見つめたままであった。     -しかし。とても『綺麗』だ-  正直に、そう思った。美しい太夫や色っぽい娼妓などを見慣れた土方でも、感嘆するほどの美しさだった。  同門の徒であり・弟分のような『沖田』と言う青年も、女と見紛うような美貌(つまり女顔)だが、この少年は次元が違う。  -本当に『この世ならざるもの』のような-  と言っても、禍々しいと言うわけではない。寧ろ、その逆。清浄で………そう〝神々しい〟と言えるような……………。 「………てめえ、名は?それもわからねえか?」  口調がぶっきらぼうになってしまうのは、もう仕方なかろう。それこそが、この『土方』と言う男なのだから。 「………名、ま…え?………そ……う………『(くず)(はら)………(そう)』………」  その名が表す通り。『蒼』と言う少年の左目は、高く澄んだ空の如く、透き通った『(あお)い色』をしていた。 「………そうか、ならば『蒼』。行く宛てがねえんなら、俺と来るか?」
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