第1章

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 周りの喧騒とあまりにあるギャップに、アレは時の流れを忘れてしまいそうになる。  さく、とナイフを入れ、切り取った肉を口元に運ぶ。  塩見が、口いっぱいに広がった。  おばあさんはお肉を自分に食べさせてはくれなかった。  だからアレはこの美味しさに、夢中になっていた。  まさにうめぇ、肉、うめぇだった。  ベトがいないと、自分はまるで置きものでもなったような心地になってしまった。  どうしたらいいのかもわからない。  考え方もピンとこない。  だけどなかなか、話しかけるきっかけ、必要性も、もっといえば発想そのものが浮かんでいこなかった。 「――――」  そして周りの男たちも、実はお互いでけん制し合っているのが実情だった。  はしゃいでいるのも実際は普段以上で、しかし女を買うのには慣れていてもコミュニケーションを取ることにはまったく不得手だった彼らは、一番手でやにかにするのに奥手になっていた。  結果として結局、彼女はひとりだった。  心の中は、空っぽのままだった。 「嬢ちゃん、元気かい?」
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