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周りの喧騒とあまりにあるギャップに、アレは時の流れを忘れてしまいそうになる。
さく、とナイフを入れ、切り取った肉を口元に運ぶ。
塩見が、口いっぱいに広がった。
おばあさんはお肉を自分に食べさせてはくれなかった。
だからアレはこの美味しさに、夢中になっていた。
まさにうめぇ、肉、うめぇだった。
ベトがいないと、自分はまるで置きものでもなったような心地になってしまった。
どうしたらいいのかもわからない。
考え方もピンとこない。
だけどなかなか、話しかけるきっかけ、必要性も、もっといえば発想そのものが浮かんでいこなかった。
「――――」
そして周りの男たちも、実はお互いでけん制し合っているのが実情だった。
はしゃいでいるのも実際は普段以上で、しかし女を買うのには慣れていてもコミュニケーションを取ることにはまったく不得手だった彼らは、一番手でやにかにするのに奥手になっていた。
結果として結局、彼女はひとりだった。
心の中は、空っぽのままだった。
「嬢ちゃん、元気かい?」
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