第1章

24/40
前へ
/40ページ
次へ
 傭兵である自分たちには、決してあり得ない意見。  他の仲間たちなら、笑って相手にもしないような話だろう。  だがスバルは、話に乗っていった。  アレは――底冷えのする笑みを浮かべ、 「ありますよ、それは。剣で刺し殺すのなんて、野蛮じゃないですか? どうせ死ぬなら――相手も気づかないくらいに、そっ、と殺してあげるのが、優しさでではないですか?」 「ほぅ……それが神の思し召し、ってやつかい?」 「そうです。それを私は、行使する者です」 「まるで嬢ちゃん、自分が天使さまみたいな言い方するなァ」 「――――」  その言葉に、アレは答えなかった。  ただ妖艶に微笑み、そしてそのままベッドに横になった。    毛布をかけず、無防備な美しい肢体をさらして。  その挑発的な態度にスバルは目を細め、 「……もう、眠いのかな嬢ちゃん?」 「今夜は、月が綺麗ですね」  さっきと言動が、180°変わっている。  それに背中に、そら寒いモノを感じる。 「ああ、世界が食べられていく……あなたも、どうか安らかに」  この子は―― 「お……おっさ……」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加