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まごうことなく、ベトの部屋ではない。
そこは部隊長である、自分の部屋だった。
そして目の前には、そのベトが立っていた。
自分を、見下ろしていた。
わけがわからない。
「なーにやってんだおっさんよ? いよいよボケたか?」
混乱して黙っていると、ベトはいつもの軽口を叩く。
それが間違いなく現実であると、告げているかのようだった。
スバルは思い悩み、頭を抱える。
「……夢、だったのか? いやしかし確かにわしは、今まで……?」
「おいおい、大丈夫かよおっさん? 冗談じゃなく、ホントにボケたか?」
かなり本気で心配というかこっちの様子を訝しむベトにスバルはかぶりを振って、
「いや……だ、大丈夫だ」
悪い夢でも見たようにぶつぶつ言いながら立ち上がり、ヨロヨロとおぼつかない足取りで部屋から出ていった。
予定は、詰まっている。
これが現実であるのなら、のんびりベッドで座っている暇はなかった。
それをベトは笑顔で手を振り見送ってから――静かに、呟いた。
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