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「……あんだけデケー声で話してて、聞こえねーわけねーだろ」
昨晩のすべてのやり取りは、ベトの耳に聞こえ目にも映っていた。
気づかないわけがなかった。
今まで奇襲を決して許さなかったベトは徹夜明けだろうが襲撃があった日が重なろうが、物音ひとつで意識はバッチリだった。
それは呪わしくも、思われる時もあった。
結果としてこうして、知りたくもなかったことを知る羽目にもなる。
そういうことは、別の場所でやって欲しいくらいだってのに。
「……どうすっかな」
頭をかく。
ボリボリと、ふけが床に落ちる。
構わない、スバルだって同じようなもん――のわけねーか、あのハゲじじいが。
窓から、鍛錬場を見下ろした。既に仲間たちは集まり、朝の鍛錬に勤しんでいた。
その中央には、アレの姿も見えた。
剣の振りは、昨日よりもさらに上達しているようだった。
10秒弱だったのが、10秒ジャストにもう少し、というところだろうか?
傍目にはわからないが、長年剣を振り続けてきたベトにはその違いと、そしてそこに至る大変さがよくわかった。
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