第1章

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 死。  それは常に――というより生まれた時から、ベトの傍にあった。  生まれた場所が戦場の真っただ中。  そしてずっとその場暮らしの傭兵生活。  殺さなければ、死ぬ。  死を作らなければ、死が訪れる。  だから死を振りはらうために、死をあがなっていたようなものだった。  だから死は常に自分と背中合わせに存在し、そして決して振り返り顔を合わせてはいけないものと認識していた。  死そのものは、常にこちらの心臓に手を伸ばそうとしているが。  しかしアレは、死は毎晩訪れているという。  相変わらず――何度言ったかわからないが、わけがわからない。  そこでベトは思う。  そうだ、これも神父に聞いてみよう。  死生観は、教会お得意の分野だろう。  自分が死生観? 「……く、くく」  思わずベトは、笑ってしまった。  そんなものを考える日がこようとは思ってもいなかった。  ただ、生きてきた。  ただ、殺してきた。
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