第1章

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 シンプルなそれを信条にしてきた自分が、まさかだった。 「世界はどうか知らないが、とりあえず俺は少しは変えたみたいだぜ、あんた……」  揶揄とも感心ともつかない言葉を残し、ベトは山から街へと、降り立った。 *  アレはその日、100回剣を振ることに成功した。  嬉しかった。  達成感で、体中が満ち満ちていた。  まあ、三時間もかけてのことだったが。 「う、うぅ……でき、たぁ」  へたり込む。  全身、汗でびっしょりだった。  というかむしろ汗のなかに自分がいるように錯覚するぐらいだった。  軽く手を振るだけでも、べちゃ、べちょ、という奇妙な音と、信じられないぐらいの重みを感じる。  いやもうまったく動けないけど。  お日様が、真上にあがっていた。  お昼。  ご飯の時間だ。  ご飯は一日二回食べるものだということを、アレはここに来るまで知らなかった。  そしてお肉というものがあんなに、美味しいということを。 「おーう嬢ちゃん頑張ってるなー」
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