社員№001 桃山素子

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注文を取りに来たウェイトレスに日替わりセットを頼むと課長は口を開く。 「とりあえず、営業のクセとか色々教えてくれないかな?」 にっこりと笑う。 「営業のクセ…ですか?」 「そう。ここそれぞれ得意な分野とかあるでしょ?」 「あー、古株の三浦さんは地道にコツコツと昔からの業者とお付き合いされてますよ」 小松が先に来ていたランチに箸をつけながら喋る。 「…桃山さんも、冷めないうちにどうぞ?」 「あ、はい」 一応気を遣って料理に手をつけなかったんだけど、そう言われると遠慮はしない。 「林田さんは結構新規開拓に意欲的ですね。ハナから相手にされなくても粘り強くて」 竜田揚げに大根おろしを乗せて口に運ぶ。 「でもわりといくつかの案件で終わってしまう事が多いですね。契約取った後の対処が後手後手です」 「冴内さんは可もなく不可もなくって感じですかねー。スタンダードに仕事は取ってくるしその後の処理も普通に期間までに間に合わせてくれますね」 「その普通が当たり前なんだけど?」 「ですねー」 あとは完了報告の書類をためてから出す人とか、明日が工事開始って時にドタキャンされまくる人とか。 「基本的にみんな真面目ですよ」 「ですねー!!」 「小松はもうちょっと真面目になりなさい」 「てへぺろー」 「若いってそれだけで許されることが多くていいわねー」 「桃山さんだってまだまだ若いでしょ?」 ああ、そうだった。 課長に話してたんだった。 静かすぎて忘れてたわ。
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