社員№002 冴内陽太

13/16
前へ
/49ページ
次へ
食堂に行くと桃山さんも食事中だった。 ただし、一人で。 「あの子、さえない君と同じ所から来た子だよね?総務に馴染めてないのかな?」 井上さんがコソッと僕に囁くように言う。 「桃山さんって人見知りする方みたいなので時間がかかるのかもしれないですね」 「声掛けに行く?」 「え、迷惑にならないですかね?」 「ならないならない」 そう言う井上さんに促されるまま僕はA定食、井上さんはB定食を持って桃山さんに近付いた。 「こんちはー。ここいいですか?」 朗らかに井上さんが声を掛ける。 桃山さんは一瞬表情が強張ったけど、僕を見て少しホッとしたように強張りが解けた。 「冴内君。と、そちらの人は・・・?」 「突然すみません。俺はさえない君と同じ営業部の井上です。こっちお邪魔するね」 そう言って井上さんはナチュラルに桃山さんの向かい席に座った。 「ほら、さえない君もいつまでも立ってないで座りなよ」 「あ、はい」 「…冴内君はうまく営業部の人と馴染めてるみたいね」 「え?いや、井上さんが声を掛けてくれるからで、それが無かったらボッチだと思います」 「こら、さえない君!」 「え?ああっ!すみません桃山さん…」 現在ボッチなうな桃山さんに言う事ではなかったかもしれない…! 「ふふっ、気にしなくていいよ。事実だし。ここにきて小松のありがたみが身に染みるわ」 「小松さんほどグイグイ来る方が桃山さんにとってちょうど良いんですね」 「小松さん?」 「支店のもう一人の事務の子で、明るくて元気溌剌という感じの女の子です」 「へー」 そんな雑談をしながら食事を進めて行く。 先に食べ終えていた桃山さんは食後のコーヒーも飲み終えたようだ。 「じゃ、私先に行くね。冴内君、井上さん、どうもでした」 トレイを持ってペコッとお辞儀して桃山さんは去って行った。 「いい子だね?」 「そうです!桃山さんは良い人何です!!」 「なに、さえない君桃山さん好きなの?」 ゴッフォ!! 飲もうとしていた水を噴いた。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加