何だか嫌な毎日から逃げ出したくて

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 もう嫌だ、こんな生活。  水曜日、学校から帰ってきて早々お母さんから返ってきたテストを見せなさいと言われた。僕は嫌々ランドセルからしわくちゃになったテストを取り出した。 「秋信、早く見せなさい」  渋る僕からテストを奪い点数を見ると、お母さんはため息をついた。 「もっと勉強しなさい」  なんだよ、どんな点を取ったって「もっと勉強しなさい」なんだから。僕はリビングから自分の部屋へといくと、おもむろにクローゼットを開けた。確か、遠足とかに使うリュックがあったはずだ。しばらくごそごそと探しているとようやく水色のリュックが見つかった。そこに僕は財布にシャツや靴下、着替えやゲームを詰めていく。おっと、忘れるところだった。僕はそっとリビングへと行き夕飯を準備しているお母さんの目を盗んでクッキーなどお菓子を部屋へと持って行く。  これだけあれば充分だ。重たくなったリュックを背負って、僕は玄関の扉を開けた。  外へ出た僕は道沿いにどんどん進んでいく。  そう言えば自己紹介がまだだった。僕の名前は武藤秋信。勉強嫌いの 10 歳、小学4年生だ。  え? 僕が家を出た理由?  お母さんはもっと勉強しなさいと毎日ガミガミ言う。僕がゲームをしようものなら勉強、勉強と言ってくる。全く、嫌になっちゃう。  お父さんはそっけなくて遊んでくれない。「お母さんの言うことを聞きなさい」それだけしか言わない。どこかへ一緒に遊びに行ってくれたためしがない。  お兄ちゃんもお兄ちゃんだ。いじわるで、すぐぶつし、都合が悪いとすぐ僕のせいにする。そのかわり、やられたことはとことん根に持つ。  そんなわけで家が嫌になった僕はどんどん歩いていく。小学校の前を通り、公園を抜け、お兄ちゃんの通う中学校がある道の1本まで来た。何も考えないで歩いてきたけれど、このまま行くとひこじいの家に着いてしまう。  ひこじいって誰かって? 若狭治彦、通称ひこじい。ひとり暮らしで、年齢は僕のひいおじいちゃんかひいひいおじいちゃんぐらい。人との繋がりが多いこの町で、人嫌いな性格を持ったこの町の変わり者。昔 ( 戦前? ) この町にやって来た人だ。僕が近所のいじめっ子から意地悪されたとき、よく匿ってくれる優しいおじさんでもある。
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