5人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ、もう!
夏なんてなくなればいいのに!」
私、鳴沢夏海は
今夜行われる予定の花火大会のチラシを、
ぎゆっと握りながらそう叫ぶ。
私には1人のお兄ちゃんがいる。
お兄ちゃんの名前は鳴沢空知。
去年までは毎年、
夏になればお兄ちゃんと2人で花火大会に行っていた。
なので、今年もお兄ちゃんと花火大会に行くつもりだった。
なのに……。
彼女が出来たお兄ちゃん……。
お兄ちゃんは彼女と一緒に花火大会に行くのだと、
楽しそうにお母さんに話していた。
「いくつになっても、
毎年、来年も再来年もこの花火を一緒に見ような。」
そう言ってくれたのに。
全部嘘だったんだ。
お兄ちゃんは私なんかとじゃなくて、
彼女と一緒に花火を見たいんだ……。
「うっ……うっ……。」
今になって悲しくなってきた。
涙が溢れていく。
ぽつりぽつりと
ほっぺに涙が伝う。
最初のコメントを投稿しよう!