夏花火

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「ああ、もう! 夏なんてなくなればいいのに!」 私、鳴沢夏海は 今夜行われる予定の花火大会のチラシを、 ぎゆっと握りながらそう叫ぶ。 私には1人のお兄ちゃんがいる。 お兄ちゃんの名前は鳴沢空知。 去年までは毎年、 夏になればお兄ちゃんと2人で花火大会に行っていた。 なので、今年もお兄ちゃんと花火大会に行くつもりだった。 なのに……。 彼女が出来たお兄ちゃん……。 お兄ちゃんは彼女と一緒に花火大会に行くのだと、 楽しそうにお母さんに話していた。 「いくつになっても、 毎年、来年も再来年もこの花火を一緒に見ような。」 そう言ってくれたのに。 全部嘘だったんだ。 お兄ちゃんは私なんかとじゃなくて、 彼女と一緒に花火を見たいんだ……。 「うっ……うっ……。」 今になって悲しくなってきた。 涙が溢れていく。 ぽつりぽつりと ほっぺに涙が伝う。
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