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葵が返事を返すと、彼はにっこりと笑った。不覚にもその笑顔に胸を打たれた。
リーは仕事を覚える速度が早かった。よすぎるといってもいいくらいだった。
彼はマスターの命で瓶を一つ一つ濡れた布巾で拭きながらリキュールの名前を小さな声で連呼していった。バーカウンターの後ろにはそれぞれのリキュールがぎちぎちに詰まっており、瓶の数は三十以上ある。
全ての瓶を吹き終えるとリーはマスターの前に立ち、覚えました、と敬礼するような声で告げた。
マスターは彼の発言を受けて立ち上がり、一つの瓶を取り出して名前を手で隠していった。
「じゃあ、この瓶の名前を答えてみてよ」
マスターの発言に彼は再び軍の点呼をとるような響き渡る声で正解を口にした。
「ボンベイ・サファイアです。アルコール度数47%、ジンの種類の一つにあたります」
マスターと話していた客は穏やかに笑い、次の瓶を催促した。彼は苦笑いを浮かべながら瓶を吟味する。その視線を追って彼は先程と変わらない口調で答え、どんどんと正解していった。
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