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このバーにはジンの種類が五つ程あったが、その全ての名前を間違えずに答えた。さらに生産国、アルコール度数、全てにおいて狂いはなく、表記されていることを全て記憶していたのだ。
「……こいつは驚いた」マスターはサングラスを外し驚きながらリーを見た。「リー君はお酒を作ったことはないといっていたけど、飲むのは好きなのかな?」
「いえ、僕は下戸で全く飲めないんです」
……全く飲めないのにバーで働きたい人間がいるのだろうか。 訝りながら彼のテストを眺めていると、彼は全てのリキュールを当て、店にいた客は声を上げて彼に賞賛を贈った。
客の一人がリーに訊いた。
「何でここで働いてみたいと思ったの? お酒が飲めないのさ」
「カクテルを作るのって魔法みたいじゃないですか。様々なお酒を混ぜることで別の飲み物ができる、これって凄いことじゃありません?」
店にいる誰もが言葉を失った。カクテルを作るための道具は充分に揃っているが、ここに飲みに来る客の大半が芋焼酎だったからだ。店の前に張られていた紙にはバーテンダー募集と書かれていたな、と葵は反芻した。
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