第1章 不機嫌なプリンセス

2/19
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/383ページ
「うみ!おはよう」 「おはよう、お母さん」 朝、私がベッドから起き上がると、お母さんが部屋にいた。 「今日から新学期ね。新しいクラス、楽しみね」 「そう・・・ね」 「愛優ちゃんとも話してたの。今年も優也くんとうみ同じクラスかなぁって」 「別にあいつと同じクラスじゃなくても良い」 「もう!昔は優ちゃん、優ちゃん言ってたのに」 「む、昔の話は忘れて!」 今日から新学期。 ーー私、高瀬うみは高校二年生になる。 去年までぶかぶかだったベージュのブレザーは今はもうぴったりだ。 「うみ、おっはよう!」 あ・・・ 私が着替えてリビングへ行くと、お父さんはいつも通りハイテンションで私を迎える。 「今日もかわゆいぞぉ!さぁ、パパに朝のハグを!ぐはっ!」 「あなた。今、何時だと思ってるのですか?遅刻しますよ?」 私にハグしようとするお父さんにお母さんは容赦なく蹴りを入れる。 「りくたん、ひどいよぉ!もう!40代のおっさんに蹴りって!」 「娘にセクハラしようとする妖怪がいたから成敗しただけです」 「未だに妖怪扱い!?」 お母さんがお父さんにバイオレンスなのはいつも通りだ。 私はジャムを塗った食パンを齧りながら、2人を眺める。 私のお父さんとお母さんは高校時代からの付き合いだけど、本当に仲が良い。 こういう関係に憧れる気持ちはあった。 だけど 今の私は恋愛とか友情とか無縁すぎる。 もう全てが変わってしまったんだ、中学生だった時の私と。 私は朝食を食べ、歯を磨くと、髪をヘアブラシで梳かす。 胸元まである黒い長い髪を今日もおろす。 お父さんに買ってもらった黒縁の眼鏡。 これでよし。 「行ってきまーす!」 「行ってらっしゃーい!」 今日から高校二年生。 クラスと担任が変わる。 だけど、そんな事はどうでも良い。 私は一人でいると決めたんだから。
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!