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学校のグラウンドに着くと、予想通りあいつがいた。
ーー山崎優也。
一人で朝練してるし。
「山崎くん!」
私は彼に声をかける。
「ーーうみ」
短い茶色い髪はもう汗で濡れてしまっている。
「学校で気安く名前で呼ばないでと言っているでしょう」
「良いじゃん。幼馴染みなんだし。昔はうみだって優ちゃん、優ちゃんって・・・」
「うるさい」
「で?何だよ?珍しいじゃん。お前が学校で俺に話しかけてくんの」
「愛優さんに頼まれたの。はい、お弁当」
「お!サンキュー!これがねぇと練習になんねぇからな」
「良いじゃない。貴方にはお弁当を作ってくれる女の子がたくさんいるんだから」
「は?」
「じゃあ、確かに届けたから・・・」
「うみ!」
「何よ?」
「また、同じクラスだと良いな」
優也は爽やかに笑って言った。
っ・・・
「じゃ、じゃあね」
私は逃げるように走り出した。
だめだ、もう忘れたんだ。
あいつを好きでいる気持ちは・・・
忘れたんだよ・・・。
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