904人が本棚に入れています
本棚に追加
頷いた逸見は横に置いていた鞄を開くと、ティッシュボックスのような茶封筒を三つ机上に並べた。
仁志が結月を見遣る。
「三百万ある」
「さっ!?」
「お前を一ヶ月間、専属として雇いたい」
「……それは新しいパターンだ」
突拍子ない依頼に呆然と呟いた結月に、例の男はやはり淡々と「悪い話ではないだろう」と重ねた。
***
黒塗りの車が滑るように停止したのは、結月も耳にしたことがある一等地に高々とそびえ立つ、高層マンションの地下駐車場だった。
広々とした専用スペースはどう考えても個人所有の空間で、ならこのフロアにある車は全部仁志の所有物なのかと、結月は信じられない思いでいた。
セキュリティ用のカードリーダーを通し先導する逸見が、エレベーターへと促す。高級ホテルのような仕様に唖然としながら乗り込むと、次に扉が開いたのは最上階のフロアだった。
「こちらの階は、仁志様の居住区になります」
逸見の言葉に、結月の理解は数秒遅れた。
「……は? 階、ってことは、このフロア全部?」
「はい。正確には、こちらのマンションは仁志様の所有物になります」
「はぁ!?」
わけがわからない。
最初のコメントを投稿しよう!