第一章

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 頷いた逸見は横に置いていた鞄を開くと、ティッシュボックスのような茶封筒を三つ机上に並べた。  仁志が結月を見遣る。 「三百万ある」 「さっ!?」 「お前を一ヶ月間、専属として雇いたい」 「……それは新しいパターンだ」  突拍子ない依頼に呆然と呟いた結月に、例の男はやはり淡々と「悪い話ではないだろう」と重ねた。 ***  黒塗りの車が滑るように停止したのは、結月も耳にしたことがある一等地に高々とそびえ立つ、高層マンションの地下駐車場だった。  広々とした専用スペースはどう考えても個人所有の空間で、ならこのフロアにある車は全部仁志の所有物なのかと、結月は信じられない思いでいた。  セキュリティ用のカードリーダーを通し先導する逸見が、エレベーターへと促す。高級ホテルのような仕様に唖然としながら乗り込むと、次に扉が開いたのは最上階のフロアだった。 「こちらの階は、仁志様の居住区になります」  逸見の言葉に、結月の理解は数秒遅れた。 「……は? 階、ってことは、このフロア全部?」 「はい。正確には、こちらのマンションは仁志様の所有物になります」 「はぁ!?」  わけがわからない。
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