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四人がけのダイニングテーブルの先にはローテーブルが置かれ、その横に置かれたソファーには落ち着いた色のクッションが積まれており、結月は飛び込みたい衝動を必死に耐えた。
備え付けのシステムキッチンは、大の字で寝転べそうな程広々としている。逸見の説明を受けながら別室に設けられた寝室を覗き込むと、ダブルサイズのベッドが用意されていた。
ちょこまかと探索する結月がリビングに戻るのを待って、ソファーに腰掛けた仁志が結月を見据え口を開く。
「ここを好きに使っていい」
「まじか!?」
結月が驚愕に肩を揺らすと、湯のみを乗せたお盆を手に現れた逸見が、柔らかく瞳を緩めた。
「何かありましたら、遠慮なくお声がけください。出来る限り対応させて頂きます」
白い空間が相まって、笑みを浮かべる逸見が聖人のように見える。
天使か。……はたまた、悪魔か。
(ま、どっちでも関係ないけど)
『仕事』に見合う報酬をくれるのならば、その実が何であろうと構わない。
ソファーに腰掛けたままの仁志と向かい合う形で、結月はダイニングテーブルにもたれかかり、逸見の置いてくれた湯のみを両手で包んだ。
この緑茶は、あのペットボトル何本分の値段なのだろう。
「……ねぇ」
問いかけに、仁志が視線を上げる。
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