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「……なに? あんたも試したいの? まぁそれなりの金額貰ってるから、別に構わないけど」
「そうじゃない」
間髪入れずに返された低い声に、そりゃそうかと結月はおどけてみせる。
顔良し、金持ち、それなりに若い。優良が飛んで有料になりそうな物件だ。引く手数多過ぎて、どりらかといえば、身体が足りないだろう。
仁志は不機嫌そうに眉根を寄せ、黙ってしまった。
下世話な質問をしたと謝罪した方がいいのだろうか。結月が逡巡していると、静かに立ち上がった仁志が結月へと歩を進めてきた。
(え、もしかして殴られる?)
そんなに癇に障ったのか。
引き攣る頬を自覚しながらも、蛇に睨まれた蛙よろしく身体が動かない。と、目の前で立ち止まった仁志が、真剣な目で結月を見下ろしてきた。
形の良い唇が動く。
「あれは、条件代だ」
「条件?」
「……身体を使った方法はするな」
「っ、は!?」
「それが約束出来ないのなら、この依頼は無しにする」
何を言っているのだこの男は。
(え、おれさっき一番手っ取り早いって言ったよね? なんでわざわざそんな面倒な条件……)
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