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結月は不満を隠すこと無く「ええー……」と眉尻を下げるも、仁志も譲る気はないらしく、彫刻のように表情を変えない。
向けられる眼光が強すぎて、穴が空いてしまいそうだ。
(ああ、でも)
陽を反射して輝きに深みを増した瞳が、琥珀のように煌めく。
結月は思うままに口にした。
「綺麗な目、してるね」
「……横並びな口説き文句だな」
「使えるもんだよ、案外。まっ、直前の雰囲気作りは大事だけどね」
呆れたような眼差しにニコリと笑みを向けると、気が削がれたように、仁志は半歩退いて腕を組んだ。
「で、返事は」
金額も待遇も十二分過ぎる。
『条件』は厄介だが、ある意味腕の見せ所だ。
「ま、やるだけやってみるよ。こんなに贅沢なマンションに住める機会なんて、もう二度とないだろーし」
それらしく言いながら了承を返すと、琥珀色の瞳は安堵したように緩んだ。
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