第二章

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 滞在中、食事は自炊でも出前でも好きにして良いと言われたが、仁志が居る時は共に食卓を囲むようにと、ついでのように付け足された。  その時に報告もしろ、という事だろう。なんせ『面倒だから』の理由で、裏仕事の人間に部屋を提供してしまうような男だ。  昨日の昼食は和食の御膳が届けられ、寝不足だからとひと眠りした後の夕食には、フレンチのフルコースが用意されていた。  美味しかった。文句なく。だがやはり、どんなに環境が変わっても、結月は結月のままだった。  初めて口にする食材の数々に気が漫ろになり、膨らむ胃とは裏腹に、なんだか食べた気がしなかったのである。  スーツの男を従えたジーンズの男という奇妙な組み合わせは、周囲の奥様方の好奇を刺激したようだが、特に声をかけられるでもなく、結月はカートに目ぼしい材料を突っ込み、逸見に精算してもらった。  折角だからと普段は手の出せない高級牛肉をワンパックだけ忍び込ませたが、それ以外は実に慎ましやかな選択である。とはいえ、やはり予想通り置いているモノが違うので、結果、自身が買う時よりも二倍近くになっていた金額に、結月は頭痛を覚えた。 「逸見さんはお昼どうするの?」  昼食は手軽なパスタにしよう。  ピカピカのシステムキッチンを陣取り、しめじの石づきを取り除いて、普段よりも値の張るベーコンを厚めにカットしながら、結月は通話を終えた逸見に声をかけた。
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