第二章

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「大したもんじゃないけど、食べてく?」  フライパンにオリーブオイルを垂らし、沸騰した大鍋に投入するパスタを握りながら伺うと、逸見は腕時計を確認してすまなそうに眉を傾けた。 「ご迷惑でなければ、お願いしてもよろしいでしょうか」 「うん、いいよー。味は保証しないけどね」  茹でる乾麺を二人分に増やし、温まったフライパンにチューブのニンニクを投入しようとして、やめた。  社長補佐がニンニク臭くては示しもつかないだろう。  醤油とバターで味付けし、塩コショウで整えた和風パスタを皿に盛る。  気づいた逸見はダイニングテーブルを拭き、フォークを並べ、グラスにお茶を注いでくれた。  あまりの手際の良さについ「いい嫁さんになれるね」と感心しながら言うと、彼はやはり穏やかな笑みで「ありがとうございます」と両の手から皿を受け取り、机上に並べてくれた。 (おれ、逸見さんと生活してたら駄目人間になりそう)  いや、既に駄目人間だからそれ以上……って、なんだろ。  首を捻ったまま結月が着席すると、逸見が律儀に「いただきます」と手を合わせたので、結月も思考を切り「どうぞ」と同じくフォークを手にした。
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