第二章

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「あ、美味しいです」 「ホント?」 「はい。結月さんはお料理が出来るんですね」 「常に収入がある訳じゃないから、仕方なくだよ。逸見さんは? 出来ないの?」 「最低限は心得ていますが、最近は全くですね。効率の方を優先してしまって」 「時間は有限だからねー」  等しく与えられた二十四時間の活かし方は、人それぞれだ。  あっという間に平らげた逸見は「ごちそうさまでした」と手を合わせ、「お粗末さまでした」と返した結月に、皿洗いを申し出た。  そんな暇はないだろう。大丈夫だと断って、結月は会社に戻ると言う彼の姿を苦笑混じりで送り出した。  逸見の謙虚さと仁志のふてぶてしさは、足して二で割ったら丁度なんじゃないかと思う。 (いや、でも逸見さんには今の逸見さんでいてほしいし)  胸中に湧き出た葛藤に、もしかしてこれが親心ってやつなのかと結月は胸を抑えたが、逸見は結月の二つ年上だというからおそらく違うだろう。  因みに仁志は更に三つ上の二十八だと聞いた。思っていたよりも若い数字に、思わずフォークを落としそうになった。  逸見が会社に戻るという事は、仁志もそこにいるのだろう。電話の相手も、彼だった可能性が高い。
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