第二章

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 先程と同じく、その宿に紐づくプランが並ぶ。が、今度は『格安』以外のプランが表示されていない。 「ふん?」  違和感に結月は再びトップページに戻り、同じく古びた外観の宿のプランへと飛んだ。  こっちも通常料金のプランはない。  『好きじゃない』と発した苦々しい表情の仁志の顔が浮かぶ。 「……もしかして、この事?」  ともかく気になった以上、調べてみる価値はある。  両手を組み一度大きく伸びをして、結月は画面に集中した。 ***  頭の中の情報を整理するのに、煮込み料理はうってつけである。  水分が気泡となり、小さな膜を破って水蒸気へと還元していく様は思考を邪魔しないし、クツクツと鳴り続ける音も実に耳に優しい。  せっかくの高級肉を市販のルーで煮込むなど、とんだ素材殺しだと料理人も真っ青な暴挙のように思えたが、この部屋には結月を咎める者はいない。出来上がったビーフシチューは、十分に結月の舌を唸らせ、おそらく最新型だと思われる炊飯器で炊いた白米も文句なしに美味しく、結月は大満足だった。  この仕事が一段落したら、買い替えを検討してもいいかもしれない。そんな思考が掠める程に。
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